フランク ヴァイオリンソナタ 演奏解釈 (4楽章)

第4楽章 Allegretto poco mosso

ソナタ形式:
第1主題はピアノから始まるカノンで書かれています。このメロディは特徴的な跳躍がなく、とても自然で滑らかに流れます。全曲を通じて使用される一楽章のM1の意味深い跳躍から意識的に離れているような感じがします。この主題のM4で示した部分は展開部で使用されます。
楽譜1(1小節)

FranckVnSonata0401

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フランク ヴァイオリンソナタ 演奏解釈 (3楽章)

第3楽章 Recitativo – Fantasia

4小節の序奏により次のフレーズが提示されます。
楽譜1(1小節)
FranckVnSonata03011楽章のM1から導かれたものですが、1楽章59小節からのフレーズに性格は似ており、否定的な、暗い運命を予感させるような響きがします。
引き続いて、ヴァイオリンのRecitativoが演奏されます。

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フランク ヴァイオリンソナタ 演奏解釈 (1楽章)

 

私がまだ20代のころ、この素晴らしいヴァイオリンソナタについて、1,2,3楽章と4楽章の感じが違いすぎて、それがこのソナタの問題点だという話を耳にしました。そういわれれば確かに1楽章の感じで統一されていた楽想が、終楽章ではがらりと変わっています。

この問題は長く尾を引き、あるとき「ボルジア家の人々」などルクレツィアについて読んでいるときに、ルクレツィアにまつわる噂からヒントを得て大変に文学的な解釈を思いつきました。 もちろんこのような忌まわしい話は、フランクにも、イザイにもまったく無関係です。
文学的な解釈については別にご紹介することとして、ここでは基本となる音楽的な事項をご紹介します。

1楽章の形式はA-A’という形式ですが基本的なモティーフを使用した第1主題と、対照的でM1から離反した第2主題を持っていることから、展開部を欠いたソナタ形式と考えるほうが妥当な感じがします。

それでは、一楽章を詳細に見てゆきます。
Allegretto moderato の序奏で全曲の印象を決定づける動機が提示されます。第1小節目の響きが素晴らしく印象的で、この動機(M1)は問いかけるような、何かにあこがれるような趣があります。この音型を4度繰り返して第1楽章の主題に接続します。

楽譜1(1小節)

FranckVnSonata0101a

 

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21世紀の音楽の方向性(1)

20世紀の音楽は、それまでの音楽の楽しみ方、評価、すべての面で、それまでの数世紀の音楽の基準を完全に変えてしまったと思います。まづ第一に18世紀以来成長してきた機能和声をよりどころにした音楽が終焉を迎えてしまったこと。音楽の演奏についてはレコード、CD等の登場で最高レベルの演奏が簡単に聞けてしまうという、それまでは想像もできなかった変化が起きました。

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Violin Duo

ヴァイオリン・デュオの楽しみ

デュオというのはポピュラーなようで、じつはあまり知られていないアンサンブルの分野ではないかと思います。とくにヴァイオリン・デュオというのは先生と演奏した想い出はあるのでしょうが、どのような曲があって、本当はどんな曲なのかということは案外知られてないようです。

 

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ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 Op.130/133 演奏解釈の手引き(1)

第1楽章

私は13番の四重奏の一楽章にブラックホールのようなエネルギーを感じます。下に向かって沈み込んでゆくようなエネルギーです。ベートーヴェンは4つの降下する音に完全に執着しています。なぜでしょうか?それは大フーガに籠められえいる強烈な上昇するエネルギーとの対照ということで理解できます。第一楽章は独立したがソナタ楽章というよりは、大フーガへの序と考えたいと思います。第一楽章の構成は、13番の四重奏とフーガグロッセを切り離して演奏してはいけないことを雄弁に語っております。以下に詳述します。
 

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AdMaestroを初めてステージで使いました。

私どもの定期演奏会に来てくれていたお客様から、子供たちの伴奏をしてくださいと申し込みがありました。小学校の卒業記念の発表会なのですが、小学6年生の子供が4人ということでした。曲はコレルリ:ラフォリア、クライスラー(フランクール):シシリアーノとリゴドン、エクレス:ソナタ メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 2,3楽章。以上を弦楽合奏の伴奏にしてお願いしますということでした。コレルリ、クライスラー、エクレスはチェンバロを入れた通奏低音付の編成で編曲しましたが、メンデルスゾーンは弦楽合奏だけではだめですので、AdMaestroを使用することにしました。
 

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マイナス・ワン またはプレイ・アロング・CDの使い方

私はアドマエストロを開発する前に、プレイ・アロングCDなどをいろいろ使用してみました。Minus One 社のCDを一時弊社で販売したこともありました。同じ種類であるカラオケに比べて満足感は大変小さいと思いました。その理由はクラシック音楽の方が自由度が高いというか、自由に演奏することを非常に大事だと思っているからだと思います。そしてオーケストラがソリストに合わせるのが当然だと思っているからです。その点が新しい分野として開発されたカラオケと大いに違うんでしょう。

マイナス・ワンの一番良い使い方は、もちろんAdMaestroの音源として使用することです。これならばソリストに合わせることができますからうまくゆきます。モーツァルト、ショパン、シューマンのピアノ協奏曲を演奏してみました。 でも実際にどのくらいうまくゆくかというと、音量に対するいろいろな配慮が必要です。

 

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