カテゴリー別アーカイブ: 演奏解釈

Brahms Piano Quartet No.2

ブラームスの室内楽作品としては最も規模が大きくて約50分程度かかります。今まで何度か合わせてみたことはあるのですが、きれいな曲だが長いという印象しかありませんでした。今回この曲を真面目に演奏してみようということになったので、曲の構造を自分なりに把握するためにメモとして書いてみようと思った次第です。
 

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ハイドン 弦楽四重奏曲 Op.20から1曲を選ぶならば?

太陽四重奏曲と呼ばれるOp.20は初期のハイドンのモニュメント的な価値がありますが、一曲を推薦ならばどうなのかということを考えてみたときのメモです。何かのご参考になれば幸いです。作品の順番はHenle版のスコアの
順序にしました。作曲順に並んでいると思います。

それから、、ふと思いついて楽章ごとに難易度を書き込んでみました。難易度の定義が難しいのですが、大体すべての室内楽がほぼIn Tempoで演奏できる人を考えて、その人にとっての難易度を表現しました。ですから初心者の方は、1を2と読み替えると良いかもしれません。技量の問題を中心に評価しています。
難易度の表示:1.少しの練習か初見でも演奏可能、2.事前の練習が必要である。3.時間をかけて準備する必要がある。
 

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シューベルト ピアノトリオ 第1番 第1楽章

シューベルトには2曲の素晴らしいピアノトリオがありますが、本来は1曲であったはずのピアノトリオがシューベルトの勘違いにより2曲作曲されることになったという話を聞いたことがあります。出典を調査中ですが、2曲目はとにかく大変急いで作曲されたとのことです。

2曲のトリオの1楽章を比べると、Op.99は時間をかけて計画された感じがしますが、Op.100は慌てて書き始めたような感じがします。それでも名曲に仕上げるのはさすがです。しかし2楽章以降は、やる気が出てきたようで、Op.99に勝るとも劣らない名曲に仕上がっています。

 

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ブラームス ピアノ五重奏曲 Op.34 第4楽章

第4楽章は491小節あり長大ですが、全体の構成は序奏付きの展開部のないソナタ形式です。

序奏部 Poco sostenuto (1-41)
提示部
第1主題部 Allegro non troppo (42-92)
第2主題部 un pochettino piu animato(93-160)
結尾部 TempoI (161-183)

再現部 
第1主題部 Allegro non troppo (184-249)
第2主題部 un pochettino piu animato(250-319)
結尾部 TempoI (320-340)

コーダ Prest, non troppo
第1主題による (341-391)
第2主題による  (392-466)
コーダ (466-491)
 

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ブラームス ピアノ五重奏曲 Op.34 第1楽章

1楽章は分かりにくい楽章です。何度も演奏しましたが、これが果たして名作なのだろうかと疑ったこともあります。演奏するうちによくわからなくなってくるのです。いろいろ考えてみて一応まとまったので書いてみます。

 

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シューベルト ピアノトリオ 第2番 4楽章

この楽章は非常に美しく、シューベルトの世界に引き込まれてしまうのですが、演奏するにしたがって延々と続く4楽章に疲れてきてしまいます。そのうちにいつ終わるのだろと心配になるぐらいです。

なぜこのようなことが起こるかというと、出だしのフレーズがとても優しい感じであり、この楽章は楽しいロンドだろうと勝手に思ってしまうからではないでしょうか。

今回楽譜をよく眺めてみると、全く違った様相が現れてきました。一言でいうとこの楽章は緊密に構成されたソナタ形式で書かれており、それをしっかりと再現して組み立てる視点を持たないと迷路に迷い込んでしまうのです。

大まかに区分すると、1-230小節までが提示部です。そして231-539が展開部。再現部は540-758小節。コーダは758-846小節です。提示部が230小節、展開部が769小節、再現部が219小節、コーダが89小節。展開部が非常に大きいのが特徴です。

ここで小節数の表示ですが、新シューベルト全集に準拠したベーレンライター版の表示に従っています。ベーレンライター版はシューベルト原稿に基づくものです。Aritaliaによる初版の出版時に省略されていた部分が表示されています。現代ではPeters版が広く使用されておりますが、これは省略版であり、4楽章は748小節ですから98小節も短いのです。

 

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ブラームスの ” poco f “

ブラームスの室内楽を演奏すると " poco f" で悩みます。フォルテより少し弱くという意味は分かりますが、なぜフォルテでもなく、mfでもないのか考えてしまいます。それでブラームスがどのような場面で使用するのかを調べてみました。

 

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Brahmsの室内楽 強弱記号と発想記号

ブラームスの室内楽にはpoco  f が良く出てきます。これはどのように弾くとブラームスに褒められるのだろうという話が持ち上がりました。
まずは彼がどのような強弱記号、発想記号を使ったのだろうかと、下調べをしてみました。

作品順に、弦楽六重奏 Op.18, Op.36, 弦楽四重奏 Op.51 No.1, No.2 弦楽四重奏 Op,67について調べてみました。ピアノ入りの室内楽についても少し調べてみようかと思います。

ブラームスについては、Op.18の頃から、発想記号の指示は細かくて、あまり大きな変化をしていないよです。
面白いと思ったのは p dolce,  molto p e sempre mezza voce 等のように強弱記号に合わせて発想記号も付け加えることが多いことです。
特にピアノ領域につては注文が多いようです。
poco f については、独立したタイトルでご紹介したいと思います。

 

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初心者のための演奏解釈: Mozart 弦楽四重奏曲 ハ長調 K.157 1楽章

室内楽を始めた方が必ずと言ってもよいほど経験するモーツァルトの弦楽四重奏曲 ハ長調です。皆さんが良くさらってきていて、全楽章が止まることもなく楽しい演奏ができたとしましょう。「それじゃ次へ行ってみましょう。」ではもったいないのです。
「それでは1楽章をもう一度通してみましょう。」「それでは、、」 このような風景が良く見られます。
弦楽四重奏の欠点は楽しすぎるところかもしれません。四つの楽器が和音を鳴らしているだけで十分に幸せになってしまうのは問題かもしれません。

さっそく本論に入ります。
まず、下記の楽譜をごらんください。この曲です。

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Beethovenの弦楽四重奏曲 強弱記号と発想記号

ベートーヴェンの弦楽四重奏の強弱記号や発想記号について調べてみました。
初期の弦楽四重奏については、当時の一般的な記述の範囲で書かれています。

中期以降は発想記号の書き込みが細かくなってきますが、強弱については、ff, f, p, ppにたいして、いくつかの強弱記号を追加しています。

後期の段階では、ff piu f, f,  p, piu p, pp の6つの段階を通常の表現として使用しています。mfの使用は、ラズモフスキー1番の冒頭のチェロに対する指示が初めてですが、ほかにはOp.130 3楽章 24小節で1小節の中に次の5つの発想記号が書かれています。poco f, mf, p cres mf。しかしmfは例外的であり、全体を通じてあまり使用されておりません。 pppについてはOp.18-1,  Op.74の3楽章でsempre piu p ——ppp(415)として使われ、Op.95の終楽章 132小節でpp pppとして使われています。後期では使用されていません。

 

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