Beethoven 弦楽四重奏曲 Op.18 楽譜比較

ベートーヴェンの初期四重奏曲については、原典として参照できる資料が少ないおかげで、楽譜の差異は小さいと考えられます。現在比較できる楽譜としてはHenle版(1996)とBarenreiter版(2007)があります。ほかにPeters版(不詳)がありますが、ここではHenle版とBarenreiter版の比較します。ソースとしてはベートーベンによる自筆譜は失われており、Lobkowicz collection の手書きのパート譜(1800)、初版(1801)の二つしか現存しません。

Henle版(1996)はPaul Milesの校訂で基本的に新ベートーヴェン全集 Series VI Vol.3 (1962)に基づいております。その後発見されたLobkowitzの手書きパート譜は、全集の補遺と正誤表に反映され、このヴァージョンにも反映されています。
研究スコアと同様の書き込みがパート譜の脚注にも書かれています。練習番号はなく、小節表示です。
Henle版は()による演奏へのヒントがべーレンライター版よりも多く実用的かもしれません。

Barenreiter版(2007)はJonathan Del Marによる校訂です。研究スコアの序文にどのような校訂をしたかがかなり詳細に記述されており分かりやすいです。ただしパート譜には、校訂上のコメントはなく結論のみが示されています。練習番号と小節表示の両方があります。原典により忠実であると思います。

 

Henle版の第1ページを示します。

HNScore01

次にBarenreiter版を示します。

BaScore01

両者を比較する1小節、3小節のスラーの表現が異なっています。スタカートについても、このような点については全曲を通じて出版社により統一しています。
14小節、16小節のpについてはヘンレ版は()でベーレンライター版は[]で校訂者によって追加された明示されています。
以上、二つのスコアは基本的に差異が少ないのですが、細かく比較するとかなりの相違点もあります。

例えば19小節目のpについて、ヘンレ版は第1拍の最初の音に、ベーレンライター版はVn2,Vaは2つ目の8分音符にpをつけており、脚注として”29-30小節は原典批判書参考”としています。
145,146小節のVn1のsfの位置についてもヘンレは脚注で ”原典で位置がはっきりしない”としてタイのかかったasの2音目(2拍の頭)にsfをつけておりますが、ベーレンライター版では16音符のfにsfをつけています。

しかしながら、どちらが間違いというレベルではなく、校訂者の好み、意向などからくる差異だと思います。

以上

 

 

 

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