Brahms Piano Quartet No.2

ブラームスの室内楽作品としては最も規模が大きくて約50分程度かかります。今まで何度か合わせてみたことはあるのですが、きれいな曲だが長いという印象しかありませんでした。今回この曲を真面目に演奏してみようということになったので、曲の構造を自分なりに把握するためにメモとして書いてみようと思った次第です。
 

1楽章:Allegro non troppo
ソナタ形式で割合に簡明に作曲されています。

第1主題と第1主部
第一主題を図1に示します。ピアノにより提示されチェロに引き継がれます。4小節+4小節でA-Bの形式です。和音によるAの部分とメロディックなBの部分に強く対比されます。Bは経過的に聞こえますが、しっかりとしたテーマの一部と考えるべきでしょう。

Mov101 図1

主題はピアノと弦を入れ替えた形で確保されます。そしてAの部分の動機を使用して発展し、図2の経過句でffに達しホ長調に転調して53小節で第一主部を終わります。Mov103

第2主題と第2主部
第2主題はピアノで提示されます(図3)。第一主題が和音と下降音型で構成されているのに対し、なめらかに上昇してゆくメロディックな特徴があります。後半はゆっくりと下降します。全部がピアノだけによって歌われ非常に美しく印象的です。構成はA-B-C-C'で4小節x4です。Cは第1主題の後半部分を想起させ、関連付けられているようにも思えます。

Mov102 図3

第2主題の提示に続いて、第2主題に関連付けされた弦のメロディにより発展して、95小節から第二主部を締めくくるフレーズが始まり106小節から結尾部(図4)に接続します。

Mov104  図4

結尾句(図4)は第2主題から導かれていますが、チェロの3連音符による伴奏が伴っており第1主題との関連付けもされています。このフレーズは弦楽三重奏の形式で提示されます。その後はピアノに引き継がれ120小節で提示部を終了します。

展開部:
120-140 結尾句の動機による展開
140-183 第1主題の動機による展開
184-208 第二主部を締めくくるフレーズによる展開と再現部への接続。

再現部:
第1主部 再現 209-261
ピアノにより、オクターブ低く再現されます。和音も薄く書かれ、発想記号も異なります。(自筆譜では曲初と同じですが、初版のときにブラームスが書き直したと考えられています。)

第2主部 再現 262-314
第2主題のA-B-Cはヴァイオリン、チェロのユニゾンで再現され、C'はヴィオラのソロで締めくくられます。ピアノにより微妙に第1主題との関連付けも行われます。

結尾部 再現 315-339

コーダ:340-375
第一主題のAをカノン風に使用して、柔らかな感じで美しく曲が終止します。

2楽章:Poco Adagio
もっとも有名な楽章であり、独立して演奏されることもあります。
A、Bの二つの部分を持っており、[A-B][C][A-B][Coda]ですが、展開部を欠いたソナタ形式とも考えられます。

第1主題
A部分のテーマを図5にしまします。弱音器をつけた弦楽器の縫い取るような柔らかい伴奏にのってピアノが長いテーマを演奏します。5+5+4小節と考えられA-A'-Bの構造です。Aで提示されたテーマはA'で美しいクライマックスを作っています。そして懐かしむようにBが続きます。
このテーマの最後に伴奏音型として弦で演奏されるM1が提示されます。

Mov201


  図5

経過部 14-23
テーマの最後に提示されるMIがチェロで演奏されます。それに引き続きピアノの減7の和音と組み合わせた幻想的な経過部が続きます。

テーマの確保と第2主題への接続 24-41
図5のテーマをヴァイオリン、チェロ、ヴァイオリンを引き継ぎながら少し変奏された形で確保しM1を使って第2主題に接続します。

第2主題

執拗に下降する悲痛な響きが漂うメロディでピアノで提示されます。そして常にうねるように上昇する弦の対旋律を伴います。

構造は4+4+4+4に分かれます。最初の2小節部分の特長をAとすれば、[A-B] [A-B] [A-A] [A-C]という感じでAがfis-moll, h-moll, a-moll, h-moll, fis-mollと転調しながら徹底されます。平和で穏やかな第1主題との対比は見事です。

Mov202

 図6

中間部:58-85

図7の静かで瞑想的な弦による3重奏に導かれて、第1テーマから導かれた自由な旋律がピアノのユニゾンにより演奏されます。85小節で中間部を終えて主部(再現部)に接続します。Mov203  図7

再現部:

第1主題 再現 86-99
テーマがオクターブ上でヴァイオリンとチェロのユニゾンで再現されます。86小節から弱音器を外します。

経過部 再現 100-108

第2主題 再現 109-126
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのユニゾンで演奏されます。

コーダ: 127-155
ヴァイオリンとチェロで第一主題を華やかに繰り返します。その後弱音器を装着してM1の動機(図5)を使いながら静かに曲が終わります。

3楽章 Scherzo
Scherzo[1-212] Trio[212-326]  Scherzo da Capoですから長大な楽章です。

Scherzoは図8と図9の二つのテーマを持っており、はっきりとしたソナタ形式で書かれております。
他の楽章と異なり動機を丹念に使用する書法が活用されています。
提示部 1-54 展開部 54-117 再現部 119-168 コーダ 169-211 です。

提示部:
第1主題部 1-33
第一主題(図8)はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのユニゾンで提示されます。
主題はピアノに引き継がれ主題の動機により発展し第2主題に接続します。

 

Mov301  図8
第2主題部 33-54

第2主題(図9)はピアノでE-durで提示されます。その後ヴァイオリンとチェロのユニゾンで引き継がれ、提示部を終わります。結尾部はありません。

Mov302 図9

展開部:55-119
C-durで少し変形した主題が弦のユニゾンで演奏されます。

再現部 88-168
第1主題部 再現 119.-148
ヴィオラ、チェロのユニゾン再現され、ヴァイオリン、ヴィオラに受け継がれます。

第2主題部 再現 33-54
ヴィオラで再現されます。ピアノに引き継がれますがヴィオラはソロとして残り対旋律を演奏します。

コーダ 169-211
ヴァイオリン、ヴィオラにより第1主題が演奏されて動機を重ねて使用して最後はピアノの華やかなアルペジオでFINEです。

TRIO

第1部 214-246
カノン風に始まるごつごつしたd-mollのメロディ(図10)となめらかで流れるようなF-durのメロディ(図11)が強く対比されています。この部分は繰り返されます。

Mov303 図10
Mov304 図11

第2部 246-281 
F-durで提示されたメロディが動機に分割されて展開されます。

第3部 281-326
基本的には第1部が繰り返されており、小さなコーダがついています。
そして Scherzo da Capo になります。

第4楽章 Allegro
ソナタ形式で作曲されていますが、テーマらしきものが沢山出てきて複雑な構造をしている楽章です。
第一主題は明白ですが、第2主題を図14にするか、図 にするか、または2つとも副主題と考えるか迷いましたが、
図14を第2主題として図 は結尾部の主題としました。

構成
提示部
  第1主題部 1-114
  経過部
  第2主題部 114-142
  結尾部 143-205
展開部 206-270
再現部
  第1主題部 再現 271-323 (第1主題は省略される)
  経過部 324-354
  第2主題部 再現 354-382
  結尾部 383-443

コーダ 443-519

提示部
第1主題(図12)
ヴァイオリンで提示されピアノに引き継がれ、テーマが徹底されます。その後にテーマのM1から導かれたパッセージ(図13)を挟んで53小節から第1主題が多少変形されてffで再提示されます。熱狂はさらに続き83小節で第1主題に関する部分は終了します。

Mov401図12
 

Mov405  図13

経過部は第2主題に接続するための部分ですが図14のように全く新しいゆったりとした部分が始まります。113小節まで続きE-Durで終止します。
Mov402 図14


第2主題部 114-142
躍動的な第2主題(図15)は前半はヴィオラにより提示され後半はピアノによって提示されます。この主題はヴァイオリンとヴィオラのユニゾンで引き継がれますが、142小節で突然第2主題部は終了します。
Mov403 図15

結尾部 143-205
全音符による半音階的な下降を特長とする、結尾部のパッセージが始まります。(楽譜16)C-durから転調を経てE-durで終止します。その後、14小節間もピアノによりE-dur の属音のH音がなり、次にA-durに転調して205小節で展開部に接続します

Mov404 図16

展開部 206-270

反復記号はないので、提示部を端折って繰り返す形で展開部が始まります。243小節から270小節までは第一主題の動機によって展開を続けます。263でffに達します。ここで再現部が始まりそうですが、270小節から292小節まではは図12のM3による展開が行われます。(図17)

Mov407  図17

 

そして提示部のパッセージ(図2)を変形した(図17)に接続します。

Mov406 図17

この部分まで聞くと、ブラームスが割合に良く行う再現部の入りをぼかす技法であったかと気づきます。
それでは、どこが再現部の入りかということですが、図17が始まる270小節と考えるのが自然だろうと思います。

再現部
再現部は第1主題部以降はほぼ定型通り第2主題が主調で再現され、結尾部はF-durで始まりD-durでコーダに接続します。
第1主題部 再現 271-323 (第1主題は省略される)
経過部 324-354
第2主題部 再現 354-382 A-Dur
結尾部 383-443 

コーダ 443-519

第1主題がヴァイオリンの3連音符による軽妙でしゃれた感じモディファイされて演奏されます。この3連音符に導かれる部分は466小節まで続き、467小節のAnimatoから動機M1が重ねられ、第1主題がffで高らかに謳われて華々しく終曲します。

Mov408

 

あとがき

明日、この曲を演奏してみるのですが自分のためのメモとして書き出してみました。色々と解決していない問題もあるのですが、ご参考に公開します。以上をもとにして次はこの曲をどのように演奏するかを考えてゆきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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