バロック音楽(415の会)を楽しもう

415の会について少しお話させていただきます。私は2009年ごろから古楽器による演奏に興味を持つようになりました。それまでもバロック音楽は大好きでしたがモダンの楽器の方が良いと思っておりました。古楽器への興味はヴィオラ・ダ・ガンバから始まりました。どうしてこの楽器が滅びてしまったのかが不思議で自分でその理由がわかりたいと思ったからです。
 

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Haydnの弦楽四重奏曲 Op.20の強弱記号と発想記号

ハイドンの弦楽四重奏曲について調べました。 初期の作品でOp.20 「太陽四重奏曲」で1772年に作曲されております。したがってモーツァルトが初期のミラノ四重奏曲、ウィーン四重奏曲を書いた時代に一致します。
楽譜はHenle社のHN9208を使用しました。
 

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演奏会をやるときにどのくらい練習するか?

昨日、川口市鳩ケ谷市民センターで演奏会を開きました。プログラムは下記です。

Handel Concerto Grosso in G major OP.6-1 HWV319
Vivaldi Concerto for 2 Cellos in G-minor RV531
Dvorak String Quintet in E-flat Op.97
Mozart Quintet in E flat for Piano and Winds, K452 (String Version)

私共のグループは忙しい人が多くて練習の機会がとても少ないのですが、2か月に1回のペースで定期演奏会を続けております。
余程うまいグループかというと、そんなことは全くありません。5年くらいで49回の演奏実績が独特な練習法を編み出したのです。
 

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Vivaldi 2台のチェロのための協奏曲 Rv.

今日の演奏会で首題のチェロ奏曲を取り上げました。Vn1,Vn2,Va,Vcについて各1プルトで計画しましたが、ヴァイオリンを各2プルとぐらいは用意すべきでした。理由は独奏チェロ2台と通奏低音チェロ、それにチェンバロとバスが低音部を一緒に演奏するため、これに対抗するためにヴァイオリンをしっかり配置しなければいけないということです。

この曲は、意外に客に対するアピール力があります。お客さまの評判をとてもよかったのです。

 

 

 

 

弦楽四重奏のファーストヴァイオリンを育てる(2)

今日はドヴォルザークの弦楽五重奏の練習をしました。明日が演奏会です。

私はこの組み合わせでは2Vnを弾いているのですが、面白いことに気が付きました。ファーストヴァイオリンはプレーヤーである以外に、指揮者としての側面と、トレーナーとしての側面があります。指揮者は演奏解釈(Interpretation)です。そして楽譜通りの演奏(Notationの再現)です。もちろん両方共がしっかりしていなければうまくゆきません。Interpretationは演奏に必要な主観の部分であり、Notation通りに演奏することは客観的な部分です。
 

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Brahmsの弦楽四重奏曲 第1番のアンサンブル

今日は、ブラームスの弦楽四重奏第1番を練習しました。前回私が参加できなかったときに、Vn2,Va,Vcでさらってくれたおかげもありますが、このメンバーでは初めてだったのですが、少しテンポは遅めでしたが、初めての試演で全楽章がさあっと通ってしまうのは気持ちが良かったです。

アマチュアのグループにとってこの曲はアンサンブルの難所がいくつかありますのでご紹介するとともに対策を考えてみます。
 

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スーパーカラオケ?

カラオケはバックグラウンドの音楽に対して、歌を歌うものです。大変気持ちよく楽しいのですが、バックグラウンドの音楽は基本的に固定された音楽です。カラオケの発展として、採点システムがあり、高得点を目指してたくさんの方がすごい努力をされます。生来、生真面目な日本人にはまことによく適合するシステムです。

しかし、自分の歌を、自分のテンポで自分の節で自由に歌い上げるというのが本来の姿です。これができない理由は、録音された音楽を伴奏に使うからです。指揮ができるソフトならばこのような問題を簡単に解決できます。

自分で指揮をしながら歌うのをスーパーカラオケと呼んだなら、スーパーカラオケ大会は、今までの採点システムの大半が無効になり、オリジナリティをどう評価するかということになります。これは面白そうではありませんか?

 

弦楽四重奏のファーストヴァイオリンを育てる(1)

ファーストヴァイオリンがなぜ育てにくいかというと、技術的なことは別にして、弦楽四重奏をリードするという指揮者のような役割を負うからだと思います。初見大会のときはよいのですが、この曲をじっくりやろうというときに困ってしまいます。

一番多い失敗は、練習の内容が音程とリズムに集中してしまうことだと思います。これは楽譜に書かれていることであり、Notationの確認です。楽譜に書かれていることをさらってくるのは室内楽では各自の問題です。これにファーストヴァイオリンが過度に口出しするのでは、単なるトレーナーになってしまいます。トレーナーと指揮者は違います。
 

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Mozartの弦楽四重奏曲の強弱記号と発想記号

演奏を行うものとしては、その作曲家がどのような発想記号を使用したかを把握しておく必要があります。それでモーツァルトの弦楽四重奏について
下記のようなリストを作ってみました。初期の作品は当時の普通の記譜形式ですが、中期のK.387「春」からはとても強弱記号が複雑になってきます。
全体の傾向を見ますと、全体の音量よりも、中間の強弱にだんだん関心を持ってゆくのがわかります。特に一つの音符に作用するsf、fp、mfpを細かく使い分けている様子は、彼がどのような音楽をを求めたかを知る手掛かりになります。

下記のデータはベーレンライター社の原典版スコア(TP318, TP140)を使用しました。
表の下にいくつかの楽譜をつけました。

 

Composer Title   Strength Marks Expression Marks 
Mozart String Quartet  K.80 f, p, fp  
Mozart String Quartet  K.155 f, p,   
Mozart String Quartet  K.156 f, p,  cresc.
Mozart String Quartet  K.157 f, p,  cresc.
Mozart String Quartet  K.158 f, p, fp,   
Mozart String Quartet  K.159 f, p, fp,  fermata(mark)
Mozart String Quartet  K.160 f, p, fp,  cresc.
Mozart String Quartet  K,168 f, p, fp,  con sordino, cresc, 
Mozart String Quartet  K.169 f, p,   
Mozart String Quartet  K.170 f, sf, fp, p, pp fermata(mark)
Mozart String Quartet  K.171 f, fp,  p, sempre p,  con sordino, 
Mozart String Quartet  K.172 f, p,   
Mozart String Quartet  K.173 f, p,  decresc.
Mozart String Quartet  K.387 f, p, sf, fp, pp, sfp , cresc, > calando, decresc.
Mozart String Quartet  K.421 f, mf, fp, p,  pp,  sfp, sf, fp sotto voce, sempre p, 
Mozart String Quartet  K.458 f, p, pp, sf, fp, sfp,  cresc. sempre p, staccato
Mozart String Quartet  k.428 ff, f, p, sfp, fp,  cresc. decresc. ten.  
Mozart String Quartet  K.464 f, mf, p, sf,  cresc. decresc. ten.  calando, sotto voce,
Mozart String Quartet  K.465 f, mf,  p, pp, sf, sfp, fp,  cresc. 
Mozart String Quartet  K.499 f, p, pp, sf,  calando, fermata(mark), 
Mozart String Quartet  K.575 f, mf, p, sf, sf,  fp, mfp sotto voce, dolce
Mozart String Quartet  K.589 f, mf, p, sf, sfp, mfp sotto voce, cresc. 
Mozart String Quartet  K.590 f, p, sf, mfp, cresc. fermata(mark)

モーツァルトが弦楽四重奏でたった1回だけ使っている、松葉のdecrescendoです。K387 「春」の第1楽章です。実はMozartはK4428で初めてdecrec,を使います。dim.という書き方はしていません。
MozartK3871mov弦楽四重奏で1回だけ使用されたフォルテっシモです。Es-dur のK.428のメヌエットの中に出てきます。やむなくこうなってしまったようで面白いですね。

MozartK4283mov次はk,465 「不協和音」の1楽章のAdagioの最後の部分です。見えにくいので実際の楽譜にあたっていただきたいのですが、18小節はsfが使われてそれからsfp, 最後はfpです。ここは少し合わせにくいところなので無事通過しただけで安心しているかとも多いと思いますが、ぜひ音のイメージを膨らませて、弦楽四重奏おメンバーと話し合いをして、演奏に反映させていただきたいと思います。

MozartK4651movもう一つ参考例を挙げておきたいと思います。

MozartK4214movK.421 d-moll の終楽章です。89小節からのヴィオラの音をVn1,Vn2,Vcが受け止めるのですが、Vn1 sfp, Vn2 sf, Va fp, Vc sfと書かれています。
なんとなくわかるようなわからないような、しかし演奏は1回しかできませんから、どのように演奏するかは、あなたの主観で一つに決めなければなりません。このようなところが演奏解釈の面白いところです。

 

誰がアクセント記号 >を使い始めたか?

モーツァルトやベートーヴェン、ハイドンも含めてアクセント記号の > を使っていません。声楽曲を調べたことはないのですが、器楽曲については一度も使ったことがないと思います。しかしシューベルトの楽譜を見ると沢山 > が使用されています。例えば下記のイ短調の弦楽四重奏曲です。Schubert Rozamunde png

シューベルトが>を使い始めたとは思えませんので、彼がピアノ五重奏曲「鱒」を書くきっかけになったJohan Nepomuk Humme(1778-1837)lはどうだろうと思いました。Hummelの五重奏曲にもたくさん>がありますが、手書

Hummel Cello Sonata, Op.104

確かに使われています。さてそれではHummelの先生は誰でしょう。 実はHummelはMozartの家に8歳の時から2年間住み込みでピアノを習っています。彼は1793年にウィーンに戻り、アルブレヒツベルガーに対位法、サリエリに声楽作品、ハイドンにオルガンを学び、またベートーヴェンと親交を結んでいます。サリエリの楽譜はよく調べていませんが、ウィーン古典派と同様 > は声楽パートにも使っていないようです。

>が使用されてから、古典派がアクセントとして使用したfzなどとの混同が始まり、fzの意味合いが変わってきてしまったのではないかと思います。
この意味で演奏解釈上も > はなかなか興味があります。