弦楽四重奏のファーストヴァイオリンを育てる(1)

ファーストヴァイオリンがなぜ育てにくいかというと、技術的なことは別にして、弦楽四重奏をリードするという指揮者のような役割を負うからだと思います。初見大会のときはよいのですが、この曲をじっくりやろうというときに困ってしまいます。

一番多い失敗は、練習の内容が音程とリズムに集中してしまうことだと思います。これは楽譜に書かれていることであり、Notationの確認です。楽譜に書かれていることをさらってくるのは室内楽では各自の問題です。これにファーストヴァイオリンが過度に口出しするのでは、単なるトレーナーになってしまいます。トレーナーと指揮者は違います。
 

弦楽四重奏の場合でしたら、第一に全体でどんな音を出すかということです。これは一番簡単です。
CDのような音が出したいならば、自分たちで技術的に問題のないところを録音して、好みのCDのような音がなぜしないかをみんなで考えることです。
先に回答を言ってしまうのは、まずいかもしれませんが、大体はファーストヴァイオリンに対してほかのパートの音が大きすぎるのです。ファーストヴァイオリンがメロディーを任されているとき、その表現するダイナミックスよりもほかのパートは音量を下げます。トッププロのピアニストがメロディに対する伴奏的なパートを控えめに弾いているのと同じです。この辺を調節したらうまくゆきます。

ほかのパートがソロをする時も同様です。ソロがダイナミックスのレンジを十分確保できるようにしてあげるということです。

逆に和音を強調するなどの表現は、外声よりも内声がしっかり鳴っていることが重要です。みなさんが自分のパートを常に気持ち良い強さで弾いたら弦楽四重奏は大体バランスを失い迫力がなくなります。

次が、もっとも本質的な問題である演奏解釈です。弦楽四重奏は基本的に演奏解釈をきっちりやらないと練習を積み重ねることはできません。
ファーストヴァイオリンは何をするべきでしょうか。

スコアを徹底的に読み込みます。ここで誰がどのように出てくるといういわゆる絡みの問題ではありません。それはNotateされている問題でInterpretationの問題ではありません。一番大事なことは今主役は誰かを決めることです。簡単な方法は、4声部で書かれている全体を1声部にまとめてみることです。

この結論はとても主観的です。つまり答えが沢山あるということです。ある人は「ここはずっとヴィオラのソロ」と考えるでしょうが「ヴィオラが音を伸ばしているときに合いの手として入るVn2の数音は、ここではVn2こそが主役である」と考えるかもしれません。これが演奏解釈です。
そのことをメンバーに伝えて、その通りに実現してゆけばよろしいのです。

そして、ファーストヴァイオリンを弾きたければ、この役割(音楽解釈)があることを理解してもらわなければなりません。少なくともたたき台としての意見が言えることは必須でしょう。音楽解釈は自分の思いつきだけでは限度があり説得力もありません。沢山の演奏を参考にし、作品分析なども行い自分の音楽を作る努力が必須です。指揮者としてのポジションを経験するのは大事ですが、これは弊社のAdMaestroが強力な助っ人になります。

しかし、ファーストヴァイオリンを弾かせたい人にこのようなことを教えるのは至難ですね。

 

 

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