ハイドン 弦楽四重奏曲 Op.20から1曲を選ぶならば?

太陽四重奏曲と呼ばれるOp.20は初期のハイドンのモニュメント的な価値がありますが、一曲を推薦ならばどうなのかということを考えてみたときのメモです。何かのご参考になれば幸いです。作品の順番はHenle版のスコアの
順序にしました。作曲順に並んでいると思います。

それから、、ふと思いついて楽章ごとに難易度を書き込んでみました。難易度の定義が難しいのですが、大体すべての室内楽がほぼIn Tempoで演奏できる人を考えて、その人にとっての難易度を表現しました。ですから初心者の方は、1を2と読み替えると良いかもしれません。技量の問題を中心に評価しています。
難易度の表示:1.少しの練習か初見でも演奏可能、2.事前の練習が必要である。3.時間をかけて準備する必要がある。
 

 

No.5 Op.20 in f
1楽章はモデラートであり、ファーストヴァイオリンも含めて、弾きやすい。セカンド、ヴィオラ、チェロにはソロが回ってこないし、単純な刻みが多い。難易度:Vn1 1,Vn2, 1, Va, 1, Vc,1

2楽章:Menuet 普通のメヌエットであり、演奏はやさしい。難易度:Vn1 1-2,Vn2, 1, Va, 1, Vc,1

3楽章:6/8のAdagio, Vn1は高音が少なく弾きやすい。難易度:Vn1 1-2,Vn2, 1, Va, 1, Vc,1

4楽章:Fuga a 2 soggetti 全楽章が184小節のフーガであり、対位法に慣れている人ならば、無理な入りがないので楽しめると思います。2/2で割合に速いので、少し練習をしておいた方が良いでしょう。

難易度:Vn1 2,Vn2, 2, Va, 2, Vc,2

No.6 Op.20 in A
1楽章:Allegro di molto 3 scherzando
6番はVn1が技巧的であり、二重音、技巧的な部分が多いです。Vn2、Vaは難しくありませんが、弦楽四重奏の内声らしい動きをする部分があります。Vcは割合に簡潔なバスとして書かれております。難易度:Vn1 2-3,Vn2, 1-2, Va, 1-2, Vc,1

2楽章:Adagio
Vn1が朗々と歌い、他のパートが伴奏に徹するスタイルです。Vn2が16分音符の分散和音を刻みます。
難易度:Vn1 1-2,Vn2, 1-2, Va, 1, Vc,1

3楽章:Menuet
トリオはVn2以外の3重奏で演奏されます。sopra una cordaですので、各楽器は1弦で演奏します。Vn1はG線でd''まで要求されます。

難易度:Vn1 1-2,Vn2, 1, Va, 1, Vc,1

4楽章:Allegro
Fugaです。主題にも魅力があり、音型が跳躍を含んでいるので難しいです。テンポも速く事前に練習はしておく必要があります。

難易度:Vn1 2,Vn2, 2, Va, 2, Vc,2

No.2 Op.20 in C
1楽章:Moderato
Vcの朗々としたソロで始まります。この楽章ではVcとともに、Vn2,Vaも十分に活躍しております。ハイドンが弦楽四重奏を完成した記念すべき作品だと思います。技術的にもどのパートも難しいです。Vn2も伴奏ではなく意味を持つ音型として仕上げるのは大変だと思います。

難易度:Vn1 2,Vn2, 2, Va, 2, Vc,2

2楽章:Capriccio
劇的な感じで入ります。独創的な楽章です。Menuetoにアタッカで接続します。

難易度:Vn1 1-2,Vn2, 1, Va, 1, Vc,1-2

3楽章:Menuet Allegretto
メヌエットとしては風変りな微妙なバランスを保つテーマです。トリオは穏やかなチェロのメロディで始まりますが、長いユニゾンがあったりして風変わりで魅力的です。

難易度:Vn1 1-2,Vn2, 1, Va, 1, Vc,1

4楽章:Fuga a 4tro soggetti  Allegro
4声部の素晴らしいフーガです。弦楽四重奏の本質的な部分の一つである独立した4声部にハイドンが目覚めてゆく過程のような感じがします。全体の演奏効果もしっかりと計算してあります。

難易度:Vn1 1-2,Vn2, 1-2, Va, 1-2, Vc,1-2

No.3 Op.20 in g
1楽章:Allegro con spirto
ハイドン独特の少しいびつな感じのテーマで始まります。随所に意表を突くパッセージがあり盛りだくさんです。
どちらかというとVn1が活躍します。

難易度:Vn1 2,Vn2, 1-2, Va, 1-2, Vc,1-2

2楽章:Menuet  Allegretto
割合に普通のメヌエットです。ただし終わり方が少し変わっていて、3楽章に接続します。

難易度:Vn1 1,Vn2, 1, Va, 1, Vc,1

3楽章:Poco Adagio
のびやかな美しいアダジオです。各パートに美しいフレーズが割り振られています。特にチェロには長く美しいソロがあります。

難易度:Vn1 1-2,Vn2, 1, Va, 1, Vc,1-2

4楽章:Allegro di molto
短い楽章ですが弦楽四重奏曲の様式が確立しています。4声部の共同関係と独立性のバランスが見事です。

難易度:Vn1 1-2,Vn2, 1-2, Va, 1-2, Vc,1-2

No.4 Op.20 in D
1楽章:冒頭の6小節で構成されるフレーズが4回続くハイドンらしい形式的な面白さがあります。3連音符による華やかなパッセジが各パートに散りばめられております。どのパートがやさしいというわけではありません。

難易度:Vn1 1-2,Vn2, 1-2, Va, 1-2, Vc,1-2

2楽章:Un poco adagio e affettuoso
主題に変奏曲が3曲続き、主題に復帰してコーダという構成です。コーダ部では弦楽四重奏特有の微妙な表現力が要求されております。

難易度:Vn1 1-2,Vn2, 1-2, Va, 1-2, Vc,1-2

3楽章:Menuet alla Zingarese  Allegretto
fzが沢山ついていてわけがわからなくなるようなリズム的な乱れが面白いです。トリオは一転してチェロがわかりやすいソロを弾くだけです。

難易度:Vn1 1,Vn2, 1, Va, 1, Vc,1

4楽章:Presto e scherzando
ハイドンの弦楽四重奏らしい終楽章です。生き生きとした主題とよく展開された動機。そしてVa、Vcによる新鮮なエフェクトなどもあり大変楽しく仕上がっています。

難易度:Vn1 1-2,Vn2, 1-2, Va, 1-2, Vc,1-2

No.1 Op.20 in Es
1楽章:Allegro moderato
各声部の使い方が必要十分という無駄のない自由闊達なスタイルになっていると思います。チェリストには弾きがいのある曲ではないでしょうか。

難易度:Vn1 1-2,Vn2, 1-2, Va, 1-2, Vc,1-2

2楽章:Un poco allegretto
のびやかな明るい楽章です。トリオは微妙なバランスが面白いです。

難易度:Vn1 1,Vn2, 1, Va, 1, Vc,1

3楽章:Affetuoso e sostenuto
Vn1がメロディを主導する古い弦楽四重奏の形式を抜け出した楽章だと思います。緻密に書かれている各声部は
誠に美しいアンサンブルを構成します。短い楽章ですがMozart Es-dur  K.428の緩徐楽章を想起させます。

難易度:Vn1 1,Vn2, 1, Va, 1, Vc,1

4楽章:Finale Presto
きびきびとしたフィナーレです。シンコペーションが多用されていますので弾きにくいと感ずる方もおられると思います。また展開部ではポリフォニックな面白さがありますが、ここも合奏が難しいところだと思います。

難易度:Vn1 1-2,Vn2, 1, Va, 1, Vc,1

結論:

甲乙つけがたいのですが、No.1 Op.20 in Esがお勧めです。
以上

 

 

 

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