シューベルト ピアノトリオ 第1番 第1楽章

シューベルトには2曲の素晴らしいピアノトリオがありますが、本来は1曲であったはずのピアノトリオがシューベルトの勘違いにより2曲作曲されることになったという話を聞いたことがあります。出典を調査中ですが、2曲目はとにかく大変急いで作曲されたとのことです。

2曲のトリオの1楽章を比べると、Op.99は時間をかけて計画された感じがしますが、Op.100は慌てて書き始めたような感じがします。それでも名曲に仕上げるのはさすがです。しかし2楽章以降は、やる気が出てきたようで、Op.99に勝るとも劣らない名曲に仕上がっています。

 

第1楽章はソナタ形式ですが、すこし変わっていると思います。

第1主部
ヴァイオリン、チェロ、ピアノのユニゾンによるテーマです。これに関連する部分が15小節まで力強く演奏されます。
このテーマは4+4+3+4の形をしており、形式的にはA-B-B'-Aです。3小節の部分があるので少し流動的です。

Schubert.trio101

楽譜1
これに引き続いてヴァイオリンの3連音符の伴奏により楽譜2がチェロで経過的に演奏され、ここのモティーフを発展させて48小節で第一主題の部分をffで締めくくります。いろいろなモティーフが現れるので、この部分で第1主題部が終了して第2主題が始まるような印象を持ちますがそうではないようです。

Schubert.trio102

                          楽譜2

経過部1
弦の魅力的な律動をもつ刻みにのって、ピアノが楽譜3をロ短調で歌います。このメロディは2小節の序奏のあとに8小節のメロディが続くという形式を維持しながら、ピアノ(h-moll)弦(g-moll)ピアノ(As dur-Es dur) 弦:(Es dur-B dur)という順序でA-A-B-Bという形式で48小節から84小節まで続きます。その後に第1主題のモティーフを使用して属調である変ロ長調に落ち着きます。

Schubert.trio103

                          楽譜3                   

結尾部
116小節から変ロ長調で楽譜4がチェロ、ヴァイオリンと引き継がれます。そして138小節で第1主部が終わります。

Schubert.trio106
                          楽譜4

第2主題
1楽章で最も重要な主題です。展開部はほとんどこの魅力的なメロディで構成されます。

Schubert.trio105

                          楽譜5

提示部では楽譜5がヴァイオリンで提示され、次にピアノで確保され、提示部の結尾部が156小節から始まり、186小節で提示部は終了します。

展開部:
この展開部は第2主題がどちらかというと単純に並べられているだけに見えます。ここを楽譜に書かれたとおりに淡々と演奏すると飽きてしまいそうです。シューベルトが何を意図したかについて考えながら分析をしてみたいと思います。

展開部では第2主題(楽譜6は対旋律としてのチェロ譜を入れてあります。)とそれを変形した楽譜7が続きます。
やはり第2主題のモティーフによる楽譜8が続きます。そして以上の締めくくるようなffのフレーズが続いて一つの部分を構成します。

Schubert.trio107

                      楽譜6 [A]

Schubert.trio108

                      楽譜7 [B]

Schubert.trio109

                      楽譜8 [C]

Schubert.trio110

                      楽譜9 [D]

さて、各部の特長を見てみます。Aは静かで夢を見るような落ち着いた美しさがあります。BはAの名残のような余韻を持たせながら前に進むような動きがあります。CはAの動機を使用してcresc,で盛り上がってゆきます。Dは減7の和音で始まる激しい部分で大きな転調をします。

ここまでの部分を一つのまとまった表現としてまとめることが必要で、このまとまった表現を3回表情を変えて演奏することになります。

195-246  A(H)-B(h)-C(F)-D(g>Cis) Vn,Vcで始まる。
247-298    A(Fis)-B(fis)-C(C)-D(d>Gis) Pfで始まる。Vn,Vcの声部の入れかわり。
299-362      A(Des)-B(cis)-C'(g)-E(d>Gis)  Vn,Vcで始まる。

365小節でピアノが第1主題を変形したフレーズ(楽譜10)を導入して、このフレーズを使用して384小節で再現部に接続します。

Schubert.trio111

                       楽譜10

 

再現部:
385小節から570小節までです。提示部が形式通りに再現されます。

コーダ:
第2主題を想起させるフレーズがfffで演奏されます。そのあとに楽譜3の個性的な経過句が挿入されて、最後は第1主題を使用して曲が終了します。

 

 

 

 

 

 

 

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