フォーレ ピアノ五重奏曲第1番 3楽章

第3楽章 Allegretto moderato
自由な形式で書かれているが、ロンドのように聞こえる部分もありますが、単一主題によるソナタ形式と理解する方がわかりやすいと思います。
ここではソナタ形式として解説します。

非常に個性的で美しい主題です。この主題は分解されて徹底的に使用されます。楽譜1は使用されている主な動機を示していますが、リズムの特徴を使ったり、また、順次進行を跳躍に拡大したものなどほかにも沢山あります。
楽譜1 1小節~
FaureP5No10301では、初めから見てゆきます。
 

提示部:
まず最初に驚くのは、テーマを72小節にわたり聞かされてしまいます。
楽譜2 1小節~
FaureP5No10302殆ど同じ音型が6回繰り返されて一つのテーマです。A-A-B-A'-B-A' です。明らかに (A-A)-(B-A')-(B-A' )なのですが、弾いてみると(A-A-B)-(A'-B)-A'
と弾きたくなってきますが、皆様の解釈にお任せします。

この主題がピアノで2オクターブ下、弦楽器で1オクターブ下、で合計3回繰り返されます。このように主題を提示する例をほかに見たことがありません。少し飽きてくるころを見計らったように躍動的な楽譜3が導入されます。主題のM2を使った経過句といえます。
楽譜3 73小節~
FaureP5No1030383小節からは手を変え品を変えるように、主題の動機による、主題の徹底が行われます。
凝縮してみないと、全体が把握できないと思いますので、楽譜4にメロディだけを抽出したものをお見せします。
楽譜4 89小節~
FaureP5No10304この部分はピアノといろいろな弦楽器の掛け合いで進行します。8小節単位で進行し、上記第1段の最後をピアノが(ais-dis-cis)を2度繰り返していったん締めくくります。そのちょうど8小節後にファーストヴァイオリンが同様に、(cis-h-a)を2度繰り返して締めくくっています。ここでM4-M4の対比が
M4-M6の対比に変化します。そして117小節のアウフタクトからピアノとセカンドヴァイオリンのユニゾンでM6が演奏されて、この執拗な主題徹底の部分を終了します。単純な組み合わせですが、夢中になって演奏しているとなかなか把握できないものです。

ソナタ形式と考えれば、第1主部と考えられ、123小節から第2主題ということになりますが、副主題と呼ぶのが適当かもしれません。楽譜5に示します。

楽譜5
FaureP5No10305ffで始まるファーストヴァイオリンのフレーズが副主題です。Fis-durの借用和音があったりして読みにくいのですが調性はh-mollで安定しています。主要な音を拾うとh-d'-cis'-h-ais-hという単純な音列を修飾したものです。主題と比較すると、わざとと思われても仕方がない位にごつごつしており和声もごつごつしています。この副主題の目的は、主題に対して対比するモティーフの提示ではないでしょうか?全音階的で単純明快な主題だけでは作品を作る上では大曲の素材としては不十分です。この副主題の特徴はffであること、複雑な転調の可能性を持っていること、そしてリズム的に主題と対照的なものを持っていることなどがあります。主題が声楽的であることに対し和声対位法的であることなどがあげられます。これを今後の作曲に導入しますよという宣言のような感じがします。

この副主題部分は対位法的に進行して157小節からは、この副主題に主題の動機が融合して、主題に戻り一度終始します。

展開部:
176小節からは、ソナタ形式の展開部に相当します。
主題を8小節で終了して、主題を縦方向に自由に広げたピアノのメロディが提示されます。楽譜6の美しい歌はピアノからファーストヴァイオリンに引き継がれますが、副主題の動機が組み合わされて厚みを増してゆきます。

楽譜6 185小節
FaureP5No10306

201小節から、主題のモチーフと副主題が組み合わされて、立体的に進行します。オクターブの跳躍、補完しあうリズム、和声的な不安定さなどが
展開されます。
楽譜7 201小節
FaureP5No10307

209小節からは、再びM1がセカンドヴァイオリンとファーストヴァイオリンにより下記のように展開されます。ここの展開には副主題の動機も利用されます。

楽譜8 209小節~
FaureP5No10308再現部:
246小節から主題がリズム的に変形されて再現されます。3+2のいびつ感がかえって主題の特長をよく表現しています。
楽譜9 246小節~
FaureP5No10309270小節からは主題のモティーフと副主題のモティーフを組み合わせながらクライマックスに導いてゆきますが、

296小節でUn poco piu mossoになります。発想記号はp subito e sempreです。主題は3連音符系になります。そして365小節のffに達し、346小節で落ち着きます。

コーダ:
317小節のa tempo からコーダが始めります。華やかに全曲を終了します。

 

楽曲分析

Exposition (176) Theme 1   24 24 Pf
  Theme 確保 25   48 24 Pf
  Theme 確保 49   72 24 String
  Passage1 73   88 16  
  Develop & Closing by Theme 89   122 34  
  Sub Theme  123   156 34  
  Passage1 157   176 20  
Development(69) Theme1 177   184 8  
  Thema1拡大と展開 185   200 16  
  Phrase1の提示と展開 201   208 8  
  Thema1拡大とMによる展開 209   245 37  
Recapture(50) Theme1 246   269 24  
  Theme1のMによる 270   283 14  
  Phrase1による 284   295 12  
Coda(37) Thema1によるClosing 296   316 21  
  Coda 317   332 16  

 

 

 

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