弦楽四重奏のファーストヴァイオリンを育てる(2)

前回は全体の話でしたから、今回は技術的な話にします。
私がファーストヴァイオリンを弾いていて、自分の音程の上ずりに気が付いたのは29歳ぐらいでした。調べてみるとどれも高音域では上ずっています。チェロに、こちらに合わせてよとお願いするわけにもいきませんし、それ以来ずっと努力しています。皆さんの傾向を見ていると、d"位から上ずりが始まります。もっとも、絶対あってると信じているg’がおかしい方が結構いるのも事実です。
その原因がf'にあるならば、最初からやり直しですね。確かにファーストポジションは徹底的に見直して自信を持つ必要があります。

しかし、一般的な傾向として、上昇するメロディで音が上ずる傾向は誰にでもあるようです。これは耳が悪いからでしょうか?たぶん音階の構造自体に原因があるのではないかと思います。音程のことはいろいろの本に詳しく書かれていますが、メロディの自然な音程についてはあまり議論されていないようです。

多くの人が上にずれることを考えれば、楽器がなりやすいなど、何か感覚的な理由があるんかもしれないと思っています。
では、どうすればよいかというとチューナーを徹底的に使うことです。自分で練習していて、注意すべきところが来たらちらりとチューナを見ます。どこで見るかというと、大体は今弾いているメロディの主音とか属音をチェックします。こんな面倒くさいことといわれるかもしれませんが、ファーストヴァイオリンはここまで努力しないとほかの方が迷惑します。プライドをかけて克服すべきことだと思います。

いつもの仲間と弦楽四重奏をやるときには、4つのチューナーを各自の前に置くこともあります。一人ひとり自分のパッセージをを弾いてみるときに、みんなのチューナーに彼の音程が見えてしまいます。もちろん私の音程も見えてしまいます。
ただし、このような音程の調整は、まず個人の練習の段階でやるべきことであり、弦楽四重奏全体の練習の場でやるべきではありません。

チューナーは平均律じゃないかという方もいると思います。アマチュアの音程というものは純正律や平均律からは比較にならないレベルが普通です。だから平均律でまず弾けることがとても重要です。蛇足ですが、弦楽四重奏では純正律の響きはエフェクトの一つとして使うものだと考えています。このようなエフェクトを狙う場合には、これは解釈に基づく演奏表現ですから弦楽四重奏全体の練習の場でしか練習ができないことだと思います。

適当に遊ぶ時は弦楽四重奏ほど楽しいものはないと思いますが、全員の意思でそこから一歩前に出ようとすると大変です。ファーストヴァイオリンにはリーダーシップについても学んでいただかなければなりません。

 

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