演奏解釈

演奏解釈というと皆さんが敬遠します。でも演奏解釈ってなにかなって考えると、音楽を演奏する人にとって避けて通れないことだということがわかります。音楽作品は楽譜という形で生み出され記録されてゆきます。しかし楽譜は音楽ではありませんから、完全に記述することができません。だから楽譜を音楽にするという作業には、いろいろ決定しなければならないことがあり、これが演奏解釈です。

英語ではInterpretationといいますが、劇や音楽上の意味としては、(自己の解釈に基づく)役作り、演出、演奏ということであり、けっして客観的なものではありません。

楽曲分析というのもあり。こちらはアナリーゼとも呼ばれていますが、これはかなり客観性の高いもので、作曲学的な分析なのですが、分析でしかありません。ですから演奏解釈を行うための一つの道具にすぎず、これを尊重しなければならないということはないと思います。

たとえば、バッハの平均律1番のフーガにしても、この曲が素晴らしい密集型のフーガであることは知っておく必要がありますが、これがテーマですよとテーマが出てくるたびに強調されたら、全体として音楽的ではなくなりますね。といって、歌い始めたテーマが途中でブチ切れるような演奏したらこれもいただけません。

演奏解釈ができたという意味は、ほかの人から、ここはどう弾くの?と聞かれたときに、私はこう弾くのが良いと思っている、またはこのように弾きたいと答えられることです。自分が扱う音楽のスコアのすべての部分について明確に答えられれば良いのです。

16小節くらいの曲でしたら感覚だけで演奏解釈は可能だと思いますが、数百小節の楽曲になると感覚だけでは無理でしょう。このブログの一つの目的である演奏解釈は、これを読んでいただいているあなたが、自分らしい演奏解釈ができるようになるお手伝いをすることにあり、いろいろなツールを提案してゆきたいと思います。私の演奏解釈を押し付けるようなことを目的にはしておりません。